多分すぐ飽きる

どうせじき飽きるので、適当なことを書いています。

ロンドン

買い物に行こうと歩いていたら小雨が降ってきました。傘差そうかなと思った刹那、ついこの間の友人の言葉を思い出しました。

 

「ロンドンの人は傘差さないから俺は差さないでおくよ」

 

ちょうど同じくらいの雨量で傘を差した僕にそう言った友人は、小雨の中を歩いて行ったんですよね。それを思い出した僕は決断します。

 

「まぁロンドンの人は傘差さへんしなぁ」

 

傘を、差さない。ここで傘を開いてしまえば僕は軟弱な日本人だ。ロンドンの男になるには、こんなところで傘を差すなんてことはあってはならないのです。

 

傘なぞ差すまい、と開く一歩手前まで来ていた折り畳み傘をカバンに仕舞い、僕は近所のスーパーに向かって歩き始めました。気分はロンドンの男。どんな男かあんまりよく分かってないけど、多分ちょっと髭を生やしたナイスガイなのだ。

 

ていうかちょっと雨強くない? と気付いたのは、折りたたみ傘を仕舞ってから数秒後のことでした。ロンドンの男になりかけているタイミングで、割と雨足は強くなっていたのです。

 

「普通に降るやつやん」

 

半ば絶望。結構しっかり振りやがったため、ロンドン人の僕はスーパーに着くころには意味が分からないほど濡れていました。カバンの中には傘がちゃんとあるのに。「あぁ傘持ってないのねあの子、可哀そうに」と言いたげに見つめるおばちゃんにカバンの中のこいつを見せて絶句させてやりたいなって思いました。

 

てかよく考えたらこの前傘を差さなかった友達もその後しっかり雨が降ったから僕の傘に入ってたわ。さらに言うと本当にロンドンの人は傘差さないのか? 友人への理不尽なヘイトは留まることを知りません。傘を差さなかったために後でこれほど恨まれる人間なんて彼くらいのものですね。

 

買い物を終え、スーパーから出た僕の目の前に広がるのは薄い雲の切れ間から覗く青空でした。くそったれが。